<12>不法在留の外国人の通報義務の通知と、2020年6月28日に出された、新型コロナ対策に当たっての通知

はじめに

今回の記事では、不法在留をしている外国人の通報について書いています。

結論を言うと、入管法で通報する義務があると定められている国又は地方公共団体の職員であっても、ケースバイケースで判断をすることが可能となっています。

さらに、新型コロナの感染対策に当たって、2021年6月28日に厚労省より新たな事務連絡がでましたので、それも紹介します。

入管法ではこうなっている

入管法第62条で、不法滞在などの外国人を知った時の通報義務について、下記の通り定められています。

出入国管理及び難民認定法

第六十二条 何人も、第二十四条各号の一に該当すると思料する外国人を知つたときは、その旨を通報することができる

2 国又は地方公共団体の職員は、その職務を遂行するに当つて前項の外国人を知つたときは、その旨を通報しなければならない

入管法第62条1項には、第二十四条に当てはまる人、つまり、退去強制の対象者と思われる人(オーバーステイの人など)を知ったときは、通報することが「できる」とあります。

誰でも、通報することが「できる」だけで、通報しなければならないわけではありません。

次の2項では、「国又は地方公共団体の職員」についての規定ですが、こちらは、通報「しなければならない」とあります。義務が課せられています。

ただし、平成15年(2003年)に法務省入国管理局長から、通知が出ています。見ていきましょう。

課せられている通報義務と、行政目的の達成を比較して、個別に判断

内閣府の男女共同参画のHPに、「被害者が外国人の場合」について記載されたページがあります。

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/siensya/08.html

その中のQ&Aにも通報義務の解釈について触れられていますが、根拠となるし通知が「関係法令・制度一覧」に掲載されています。

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/16.html

そこに、法務省入国管理局長から平成15年(2003年)に出された、出入国管理及び難民認定法第62条第2項に基づく通報義務の解釈について(通知)のリンクがあります。

https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/pdf/151117_1671.pdf

151117_1671

この中で、特に重要な部分として以下に引用します。

通報義務を履行すると当該行政機関に課せられている行政目的が達成できないような例外的な場合には,当該行政機関において通報義務により守られるべき利益と各官署の職務の遂行という公益を比較衡量して,通報するかどうかを個別に判断することも可能である。

この解釈により、入管法では国又は地方公共団体の職員の通報義務が課せられているものの、通報すると、DV被害者の保護といった行政目的が達成できない場合は、「通報義務で守られる利益」と「職務の遂行という公益」を比べて、個別に判断できます、ということです。

個人的には、DV被害を受けて保護を求めている人に対して、まずはその人への人道的な配慮があって当然だと思います。保護を求める人がDV被害を受けている状況で、他に危害を加えることはないのではないでしょうか。

例えば、日本人の配偶者から暴力やモラハラを受けていて、在留期限が迫っても、日本人の配偶者に更新申請に協力をしてもらえずオーバーステイとなってしまった場合ですが、本人の責任によるものだけではないはずです。

コロナ対策に当たっての通報義務の解釈が出ました

令和3年(2021年)6月28日に、厚生労働省新型コロナウイルス感染症 対策推進本部から、「新型コロナウイルス感染症対策を行うに当たっての出入国管理及び難民認定法第 62条第2項に基づく通報義務の取扱いについて」という事務連絡が出ました。

https://www.mhlw.go.jp/content/000798935.pdf

000798935

重要な部分としてあげます

感染拡大防止等の目的達成のため、退去強制事由に該当する外国人であっても、(省略)適切に実施することが必要であり、入管法に基づく通報義務を履行した場合に当該目的を達成できないおそれがあるような例外的な場合には、当該行政機関において、通報義務により守られるべき利益と各官署の職務の遂行という公益を比較衡量して、通報するかどうかを個別に判断した結果、通報しないことも可能である。

基本的なスタンスは、平成15年(2003年)に法務省入国管理局長から出た通知と同じですが、その行政目的が、新型コロナウィルスの感染対策となっています。

感染を拡大させないために必要な対策としては、通報義務よりも、感染対策が先であることは明らかですが、「通報しないことも可能である」として、ここでも個別の判断となっています。

新型コロナ感染症の検査や濃厚接触者への聞き取りで関わる保健所の職員や、発症者を受け入れる公立病院などでの医療従事者には、地方公務員が含まれますが、ケースバイケースで判断ができる、ということです。

「国又は地方公共団体の職員」には通報義務があるとはいえ、「感染対策を優先させること」、と明示しなかったのは、残念です。そうでなければ、本当の感染対策にならないと思います。

その後の在留資格はどうなるか

感染対策や行政目的を優先させることと判断した場合でも、不法在留の状態は変わりません。

自動的に在留資格が回復されることはなく、そのままでは、不安定な立場に置かれます。

行政目的を優先させるとしても、落ち着いたところで、在留資格のことも検討しなければなりません。帰国を希望するなら、出頭すると出国命令で帰国ができますが、それまで日本に在留していた人の多くは、日本での在留を希望するケースが多いです。

日本人や永住者と結婚をしているなど、日本に生活基盤がある場合は、在留特別許可を願い出る方法があります。

こうした相談は、専門的な内容となりますので、専門家への相談をお勧めします。