ブラジルが絡む渉外相続の準拠法と相違点

ブラジルが絡む渉外相続の準拠法

士業の方々からのご相談では、相続案件を受任したらブラジルに移民した日本人や日系人の存在が明らかになって、相続人の確定の立証や連絡手段、翻訳で困った...という場合がほとんどです。

スムーズな手続を行うために、両国の制度を踏まえて、ブラジルの親族に日本の制度についてもポルトガル語で丁寧に説明しながら進めることが、カギとなります。

日本に住む日本国籍の方が亡くなった場合、日本の法律が適用されます。

法の適用に関する通則法(通則法)36条

第三十六条  相続は、被相続人の本国法による。

この場合、準拠法は日本の法律ですので、日本の法務局や裁判所で最終的に行う手続きは一般的な相続案件と変わりません。

ただし、日本側の手続きに対して、ブラジル側で揃えることができる証明書や書類、また言語がが異なるため、検討が必要です。

ブラジルは、日本と制度や社会システムが日本と異なります。例えば、身分関係を証明する書類が戸籍ではなく、出生証明書や婚姻証明書、死亡証明書になることです。ブラジルに住む日系人の相続人に日本の相続手続きについて説明し、日本語で記載された遺産分割協議証明書などをポルトガル語に翻訳することも必要になります。

また、ブラジルの相続人に、印鑑証明の代わりに現地の公証役場や在ブラジル領事館でサイン証明を行ってもらうことになります。

さらに、ブラジルの相続人が亡くなって代襲相続が発生している場合で、亡くなっている相続人がブラジル国籍者のときは、通則法36条により準拠法はブラジルとなります。

ブラジルの相続順位は民法で定められています。2002年に現行の新民法が制定され、2003年1月11日に施行されました。

この新民法より前に相続が開始された場合は、1916年制定の旧民法を適用することになります。新民法と旧民法で法定相続の順位が異なるため、検討が必要です。

ブラジル旧民法 - 1916年1月1日制定 法令3071 → 2003年1月11日の新民法施行時に廃止

1603条 法定相続は次の順位で決定される。

第1順位 直系卑属

第2順位 直系尊属

第3順位 生存配偶者

第4順位 傍系血族

第5順位 州、連邦府又は、国

ブラジル新民法 - 2003年1月11日施行 法令10406

1829条 法定相続は次の順位で決定される。

第1順位 生存配偶者と直系卑属

第2順位 生存配偶者と直系尊属

第3順位 生存配偶者

第4順位 傍系血族

第5順位 州、連邦府又は、国

<関係法令>

  1. 法の適用に関する通則法 - 平成十八年法律第七十八号。法例(明治三十一年法律第十号)の全部を改正
  2. ブラジル合衆国 旧民法 - 1916年1月1日制定 法令3071。2003年1月11日の新民法施行時に廃止
  3. ブラジル連邦共和国 現民法 - 2002年1月10日制定、2003年1月11日施行 法令10406
  4. ブラジル民法施行法(国際私法) - 1942年9月4日制定 法令4657
  5. ブラジル離婚法(夫婦関係及び婚姻の解消とその効果、諸手続き、その他措置に関する規律) - 1978年12月26日制定、1978年12月16日施行 法令6515

ブラジルと日本の手続きの相違点

手続き全体を通して、ブラジルの親族が絡む渉外案件では通常の相続手続きと何が変わるのかでしょうか。「変わる点」を下記に挙げてみます。

  1. 相続人がブラジル国籍者の場合は、戸籍の代わりにブラジルの出生証明書や死亡証明書、婚姻証明書と共に、それらの和訳が必要となる
  2. ブラジルで代襲相続が発生し、被相続人がブラジル国籍者の場合は、ブラジル民法に従って相続人を確定する必要がある。
  3. 日本国籍者や二重国籍者で、亡くなったにもかかわらず、戸籍に反映されていない場合は、ブラジルの死亡証明書を元に日本の役所に死亡届を行うなど、戸籍を整理する必要がある
  4. ブラジルから取寄せる書類や、宣誓書の内容について、あらかじめ法務局や裁判所に相談してから進める必要がある
  5. 遺産分割協議証明書の手続きは、ブラジルに住む日本国籍者の場合は在ブラジル日本領事館か現地の公証役場でサイン証明を受ける。ブラジル国籍者の場合は現地の公証役場でのサイン認証を受けることになる。日本に住むブラジル人の場合は、印鑑登録がある場合はそれを使い、ない場合は在東京ブラジル総領事館や近くの公証役場でサイン証明を行う
  6. ブラジルの公証役場でサイン認証を受ける際は、文書をポルトガル語に翻訳する必要がある
  7. ブラジルには住民票などの住居を証明する公的な書類がないため、一般的には、日本国籍者の場合は在ブラジル日本領事館で在留証を取得し、ブラジル国籍者の場合は宣誓書を作成して、その中で居住地について記述し、サイン証明を取得してもらう
  8. ブラジル側の親族との意思疎通がポルトガル語となる(日本語を話すことができるのは1世や2世までのことが多いです)
  9. ブラジル側の親族に、日本側の手続きの方式を説明する必要がある(ブラジルとは異なる点が多く、相手の理解を得て協力をしてもらうことが重要です)
  10. 日本とブラジルとの時差は12時間。メールでの連絡手段が多くなり、時間を要することとなる
  11. ブラジルの国民性や社会システム、役所の機能などの違いにより、時間を要することとなる
  12. 送達を行うとなった場合、1年~数年を要することになる
  13. 海外送金が発生する場合がある(ブラジルはマネーロンダリングに関する規制で、海外からの送金が非常に厳しく管理されています)
  14. 以上のことから、日本側、ブラジル側とも忍耐力を持って進めることが必要となる(一に忍耐、二に忍耐!といっても過言ではありません)

アオヤギ事務所ではブラジル案件で多くの調査と実績を重ね、全国からいただくご依頼に応えております。
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